■2017/12/29〜2018/1/4は冬休みで沖縄。

■gocoupのシングルは2018年に持ち越し。

■こちらもぜひ。
https://soundcloud.com/hanzo_tv/

■gocoup「少年タルホと極光ウサギ」近日發賣


文学少年に恋しない科学少年の為の4曲入りE.P.。

発見されなかった数式に、観測されなかった新星に、

記録されなかった現象に、発明されなかった機械に捧げる電子音楽。

来れ、科学の時代、20世紀!

少年タルホと極光ウサギ

帝都の誇る電子音楽レーベル<gocoup>の第12作品。
電子音のパルス的シークェンスやアナログ式シンセサイザーが發するグリッチ等で構成された、
懐かしくなんかないモダンな一千一秒+α。



タイトル:少年タルホと極光ウサギ
ユニット名:gocoup(ゴクウ)
レーベル:gocoup(ゴクウ)
フォーマット:CD
規格番号:gocoup.1002
当初予定されていた発売日:2012/12/12
予価:1212円(税込)
JANコード:4580294570107


01.
チョコレット彗星、突如







02.
パリ、戦前、科学[タルホノヒカリ(α)]
広告
ブエノスアイレス、降水、琥珀[タルホノヒカリ(β)]








03.
亡き王子のための







04.
極光ドロップス(ゴクウ博士の非破壊検査による)





■gocoup.1002 圖案


241228_gocoup.1002.web.png


■gocoup.1002に関する(続々々)


10
■しかし、夜の散歩を楽しむにはうってつけの気候だったので、スターリィ・ナイトに火を点け、乳白色の煙を吹かしながらそのまま歩き続けた。

十分ばかり歩いた頃だろうか、それこそ倫敦のような濃い霧が俄かに立ち込めてきた。そろそろ帰ろう、という考えが頭をよぎるが、ここで帰ってしまったら何かを見逃してしまうような気がして、夜霧の中の散歩もまた一興、と自分に言い聞かせて先へ進んだ。


■さらに五分ばかり歩いたところ、煌々と灯りを放つショウ・ウィンドウが霧の中に浮かんでいるのが目に入ってきた。飲み屋ではなく、宝石店か画廊か高級なケーキ屋のように見受けられた。あたりは人通りも無く静かな一角で、この店以外はみんなもう閉まっていた。

近寄ってみて眩しいばかりの大きなウィンドウを覗き込むと、さして広くはない店内はまだ完成しておらず、空の棚がいくつかあるだけだった。

店内には、ホテルのドアマンだかベルボーイだかのような身なりの、様子のよい十二三歳の少年三人が、この真夜中近くに大きなダンボールを運んだり絵図面を広げたりしながらなにやら話し合っている。なんの店だかまったく見当が付かない。そもそも店なのだろうか。

ふと店の入り口である重厚なドアーの上に架けられた看板を見ると、そこにはなんと

<gocoup's candy store>

と品のよい書体で記されているではないか!



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■小僧さん、と呼ぶには似つかわしくない少年たちに、いささか気後れしつつ声をかけた。

「君達、このお店は──」

一人が返事をした。

電子音楽レーベルの<gocoup>が開発した、新しい飴玉を売る店です」

「飴玉?」

「ええ、gocoupのM氏がヴェネツィアの研究所と共同で開発した、耳と舌で味わう飴玉です。ひとたび口中へ入れますと聴覚に直接作用して頭の中に電子音楽が鳴り響くのです」

「真逆」

別の少年が4粒の飴玉が入った包みを手渡してきた。

「お試しになりますか」

その包みには、gocoup.1002と記されていた。gocoupの新作は、レコード盤ではなく飴玉だったのである! gocoupのM氏に一杯食わされたような気分になった。世界公演の日程を取り消してまで、新作の発売を延ばし延ばしにしてまで、こんな戯事にかまけていたのだろうか。


■差し出された飴玉4粒は、橙色、銀、水色、ペパーミント・グリーンで、どれも綺麗に透き通っていた。中にラメのような細かい粒が幾らか含まれている。半信半疑でペパーミント・グリーンを口に含んだ。そうしろと云われた訳ではないが、自然に目を閉じた。口中に、まがい物ではないちゃんとした薄荷の味が広がる。

しばらくすると、実に奇妙なことに、私の頭の中に電子音らしき音で構成された音楽が鳴り響き始めた。そしてその音楽は果たして、T氏より贖ったルクセンブルグ産のレコードに録音されていた4曲目とまったく同じであった。と、感ぜられたのは、バレヱ帰りのトスカーナ産の飲み過ぎによるものなのだろうか。


(了)

──────





──気は済んだか? (゚д゚ ) (゚д゚ ) (゚д゚ )


はい、済みました。( ・ω・)ゞ



■gocoup.1002に関する(続々)


発売延期に次ぐ発売延期を繰り返し、発売前から廃盤になったとも云われる東都の電子音楽レーベル<gocoup>の新作。内容もタイトルも一切不明で、gocoup.1002というその規格番号のみが伝えられている。



7
■霞町に住む英国人の蒐集家から、T氏はgocoup.1002と思しきレコードを譲ってもらった。T氏によると「まァ海賊盤ではあるが、極めてマスター・テープに近い状態の音源」だという。

T氏は使い古されてぼろぼろになった黒く大きな鞄から、曰くありげなパラフィン紙の包みを取り出した。


■ガサゴソ云わせながらパラフィン紙を解くと、何も書かれていない藍色のザラザラした紙のスリーヴに入ったレコード盤が出てきた。そのレコードのレーベルにはごく小さな活字で「gocoup.1002 MADE IN LUXEMBOURG」とだけ記されている。溝の模様から判断すると4曲入りのようだ。


■三杯目のジョッキを傾けながらT氏が語るには、先の英国人蒐集家R氏が商用でデンマークに訪れた際に小さな港町の骨董屋で仕入れたものらしい。

「Rさんから二枚買ったので、良かったら一枚お譲りしますよ。廉くはできませんがね」

飛び切り上等な二人前の洋食が三回食べられるだけの額を支払った。T氏は一風変わった人ではあるがペテンを働くような人ではない、ということもあるし、真贋定かでないレコードに大枚叩く酔狂な自分を演じてみたかった、ということもある。そして何より、gocoupの新作が一刻も早く聴きたかった。



8
■帰宅して早速レコードを再生した。未来派めいた清冽な電子音がスピーカーから流れてくる。海賊盤にしては音質は惡くなかった。しかし、肝腎のところはどうなのだろう。この音楽は、gocoupといえばgocoupだし、gocoupでないといえばgocoupでない。はたして、これは本当にgocoupの新作なのか──



9
■それからしばらく経った十一月の晩、帝劇でバレヱを観た。いつもなら観劇の帰りはすぐに市電に乗るか自動車を拾うかしてまっすぐ帰るのであるが、十一月にしては暖かく気持ちの良い雨上がりの宵であったので、一寸遠回りをして裏通りにある新装開店のカフェーに立ち寄り、普段飲まない葡萄酒を飲むことにした。舞台の余韻も手伝って杯が進む。

多少飲みすぎた心持になって店を出て表通りに戻ろうとしたが、普段足を運ばない道であるし、酔っていることもあり、あっさりと迷子になってしまった。はて、吾は何処に在りや。




──────



──なあ、まだ続くのか、この芸風の作文は……(゚д゚ ) (゚д゚ ) (゚д゚ )


すいません、もうちょっと続けさしてください。( ・ω・)ゞ



■gocoup.1002に関する(続)


4
■「フル・アルバムにも関わらず総演奏時間はわずか17秒」「いや、レコード24枚組みの大作である」「第一次大戦以前に製造された電子楽器のみで演奏されている」「ただ、波音と象の啼き声が入っているだけだ」「存在しない活動写真の為の伴奏音楽らしい」「電子音楽が量子重力の変換解釈学との境界を侵犯した問題作」「すべての高等学校の化学準備室に捧ぐべき傑作」等々巷間に噂されるもいっこうに発売されない東都の電子音楽レーベル<gocoup>の新作は題名すら発表されておらず、ただgocoup.1002という規格番号のみが伝えられている。

当のgocoupのM氏も、件のミュンヘン講演以降は公の場で発言をしていない。



5
■電子音楽愛好家の特徴は、オペラやタンゴのそれよりも明確である。食べ物にうるさく、本をたくさん読み、神経質である。夏を好まない。そして、大概は肥っているか痩せているかしていて、中間の者が少ない。

日本橋のMデパアトの大食堂でT氏と会ったのは八月か九月の土曜日の午後であった。いつも紺色の着物と鼠色の袴で現れるT氏は電子音楽に精通した事情通であり、よく肥っていた。


■久しぶりに会ったT氏もまた、多くのgocoup愛好家がそうするように、gocoupの新作が遅延している件をまるで我が事のように嬉しそうに憂えてみせた。

恰幅のよいT氏はジョッキの生ビールを飲みながら、酒肴代わりのつもりかオムレットをアッという間に平らげ、すぐさま給仕にカレーライスにカツレツを乗せて持ってくるよう命じた。

サンドヰッチと珈琲だけの私が、生命力の弱い仔犬か何かに思えてくるが、それはさておきgocoupの新作が遅れに遅れている件をT氏に訊いたところ、次のような回答が得られた。

「それはですね、彗星、ほうき星の運行が関係しているのです! このキネオラマのような宇宙を、土星のハイカラな輪っかのあたりからやってきたゼンマイじかけの赤くて大きなほうき星が地球とお月様の間をちょうど通過していましてね。それが地球上の時間の流れに作用して、gocoupの新作を遅らせt


■こういった、タルホ的記号を羅列して悦に入ることを、私は余り好まない。

よく食べよく飲むT氏に付き合ってつい頼んでしまったクリームソオダのアイスクリームをストローで攪拌する作業に私は集中し始めていた。gocoupの音楽もT氏も、どこか夢見がちなところがある。プラタナスとガス燈が立ち並び星が瞬く清潔な都会の夜だけが世界ではあるまい。



6
■しかし、さすがは事情通のT氏。一通り発言の中に自分のタルホ的語彙を混ぜ込むだけ混ぜ込んで満足すると、扇子を仰ぐ手を急に止めてこう続けた。

「実は、そのgocoup.1002を手に入れましてね」



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